渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する、第79期名人戦七番勝負第4局が、5月19・20日(水・木)に、長野県上高井郡「緑霞山宿 藤井荘」にて行われ、渡辺名人が133手で斎藤八段に勝って3勝1敗とし、タイトル防衛まであと1勝となりました。
※日本将棋連盟WEBページより引用譜解析結果
棋譜解析結果
開始日時:2021/05/19 9:00:00
終了日時:2021/05/20 21:15:00
棋戦:名人戦
場所:長野県上高井郡「緑霞山宿 藤井荘」
持ち時間:9時間
消費時間:133▲539△539
手合割:平手
先手:渡辺 明 名人
後手:斎藤慎太郎 八段
戦型:矢倉
相矢倉から後手が中住まいに構える。先手が先行し、お互いに玉が薄い状態で先行するも形勢互角のまま2日目に。先手に形勢傾くも難しい局面で逆転し後手が有利に。しかしながら、後手が時間に追われて再度逆転し先手が勝ち切った。
局面図
74手目△8七歩
73手目▲8六同歩の局面。後手が馬を作って攻勢をかけて飛先の歩を切った局面。ここまでは、お互いに玉が薄い状態で攻め合っているが、微妙にソフト評価値は変化するも形勢互角のまま来ている。ここでのソフト評価値は後手+136で形勢互角。ソフト読み筋は△6六歩打▲7六銀(67)△5八銀打▲3四角打△4二玉(52)▲5四歩打△3三玉(42)▲3五歩打△8七歩打▲同銀(76)△6七歩成(66)▲2四歩(25)△同歩(23)▲5三歩成(54)△8六飛(81)▲8八玉(79)△7八と(67)▲同角(34)△6七金打▲3四銀打△2二玉(33)▲2三歩打△1二玉(22)▲6七角(78)△8七飛成(86)。
本譜はここで、74手目△8七歩と歩を垂らした。この手がソフト的にはよくなく、ソフト評価値は先手+887となり、本局で初めて形勢が傾き先手優勢となった。
87手目▲5六銀
86手目△6九飛の局面。後手から攻め続けており少し差は縮まるもソフト評価値は先手+453で先手有利が続いている。ここでのソフト読み筋は▲3四角打△4二玉(52)▲8六金(87)△3三歩打▲7八銀打△7九飛成(69)▲5四桂打△同歩(53)▲6四角打△5三桂打▲5四銀(65)△3四歩(33)▲5三角成(64)△3三玉(42)▲4三銀打△8八角打▲7六玉(77)△7八金(68)▲6五玉(76)△3一金(32)▲7七歩打△8九金(78)▲7六金(86)△6八龍(79)▲6六銀(67)△5七銀打▲5五玉(65)△2二玉(33)▲2四歩(25)△6六銀成(57)▲同金(76)△3二銀打▲3四銀(43)△8五飛(81)▲4四玉(55)△6六龍(68)▲2三歩成(24)△同銀(32)▲同銀成(34)△同玉(22)▲3四銀打△2四玉(23)▲3一馬(53)
本譜は87手目▲5六銀。この手でソフト評価値は後手+1,051で後手優勢となり一気に逆転した。
本局面は問題の局面であり、先手の渡辺明名人はここで▲3四角で先手良しと考えていたが、△4三金のあとの変化に自信が持てず長考ののちに方針変更にいたった様子。Abema解説陣もソフト推奨手の▲3四角の後の角を渡して先手が勝つ順がどうして発見できず、局後の感想でAIの評価を聞かされた渡辺明名人も「AIが間違ってるのじゃないの?」と尋ねたように、どうしても人間には読めない局面だったようです。
参考1 ▲3四角△4三金
図は87手目のソフト推奨値▲3四角に△4三金と応じた局面です。人間はここから先手が良くなる順が理解できなかったところですが、ここでのソフト評価値は先手+1,686でソフトは先手勝勢と判断してます。ここでのソフト読み筋は、▲6四桂打△4二玉(52)▲4三角成(34)△同玉(42)▲5二角打△3二玉(43)▲3三歩打△2二玉(32)▲5六銀(67)△8七歩成(86)▲6六玉(77)△7八金(68)▲5五玉(66)△6六角打▲4六玉(55)△4五歩(44)▲同桂(37)△3九飛成(69)▲3二歩成(33)△同玉(22)▲4三銀打△2二玉(32)▲3七歩打△3四歩打▲同銀成(43)△3三歩打▲2四歩(25)△3四歩(33)▲同角成(52)。
後手玉を追い詰めたあと△8七歩成と後手から反撃をくらうが、玉を交わしながら大丈夫という判断です。
参考2 △6六玉
図は参考1の△8七歩成の反撃に対して▲6六玉と交わした局面。先手玉は非常に不安定だが、ここでの評価値は先手+2,090で先手勝勢。ここで再度ソフトに読ますと参考1では△7八金と読んでいたが△5八金を推奨してきた。以下は△5八金(68)▲6七銀打△4八角打▲5五玉(66)△3七角成(48)▲4六歩(47)△4九飛成(69)▲3五銀打△8五飛(81)▲3二金打△1二玉(22)▲4四玉(55)△4六馬(37)▲同銀(35)△同龍(49)▲4五歩打△3一歩打▲7二桂成(64)△3二歩(31)▲4一角成(52)△3三桂(21)▲5三玉(44)△6五飛(85)。
これらソフトの読み筋見ても良く分からいぐらい難しい局面だったようです。
100手目△5五銀打
図は99手目▲5六同銀とこの地点で後手から金銀交換をした局面。前図以降は後手から攻める順が続いておりソフト評価値は後手+1,116と後手優勢が続いている。ソフト読み筋は△3四歩打▲6四桂打△4二玉(52)▲5二金打△3三玉(42)▲2六角打△5五銀打▲3六玉(46)△5六銀(55)▲4二銀打△同金(32)▲1五角打△2四銀打▲同歩(25)△5二金(42)▲2三歩成(24)△4三玉(33)▲5二桂成(64)△同玉(43)▲7三歩打△3五銀打▲同角(26)△同歩(34)▲2五玉(36)△2九飛成(69)▲2六歩打△7三金(72)▲8二歩打△同飛(81)▲6二金打△4三玉(52)。
本譜はここで100手目△5五銀打。1分将棋の中で手番を渡す順が読み切れず後手から王手をかけた。この手でソフト評価値は後手+293となり、後手有利ではあるが形勢の差は小さくなった。
104手目△4三金
103手目▲3四角の局面。ここでのソフト評価値は後手+486で形勢はまだ後手有利。ソフト読み筋は△4三銀打▲6四桂打△6三玉(52)▲5六角(34)△5七銀成(66)▲7二桂成(64)△5六成銀(57)▲8一成桂(72)△5四角打▲4五銀打△同歩(44)▲5九歩打△4六歩(45)▲4五銀打△4七歩成(46)▲5四銀(45)△同玉(63)▲7六角打△6四玉(54)▲6七歩打△4六成銀(56)▲2六玉(36)△6七飛成(69)▲8二角打△7五玉(64)▲7七歩打△同と(87)。
本譜はここで104手目△4三金と銀を残したまま対応した。しかしながらこの手が悪かったようでソフト評価値は先手+2,824となり一気に先手勝勢に傾いた。
その後は何度か差が小さくなった局面もあったが先手優勢以上のまま進み、133手目▲7八金(先頭図)で後手投了となった。投了図以下は△7六玉(87)▲7七歩打△8五玉(76)▲8六歩打△同玉(85)▲8七歩打△8五玉(86)▲8四金打△7五玉(85)▲7四金(84)△8五玉(75)▲8四銀成(73)△9五玉(85)▲9六歩(97)まで。
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