第33期竜王戦七番勝負第2局

将棋

 豊島将之竜王に羽生善治九段が挑戦する第33期竜王戦七番勝負第2局が、10月22・23日(木・金)に、愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」にて行われ、羽生九段が96手で豊島竜王に勝ち、1勝1敗としました。
※日本将棋連盟WEBページより引用

棋譜解析結果

開始日時:2020/10/22 09:00
終了日時:2020/10/23 17:10
棋戦:第33期竜王戦七番勝負 第2局
戦型:角換わりその他
持ち時間:各8時間
消費時間:96▲448△417
場所:愛知・亀岳林 万松寺
先手:豊島将之竜王
後手:羽生善治九段

 先手豊島竜王の角換わり早繰り銀からの攻めを羽生九段が受け止める展開となったが一日目終了時点で後手有利に。60手目の封じ手直後に一度は互角に戻ったがその後一気に後手有利から後手優勢になり、最後は後手の羽生九段にAI越えの一手が出て一気に必勝形となり寄せ切った。

 以下は一手10分程度(10億手程度)で主要局面を再評価して分析しております。一手10秒の上手の棋譜解析結果とはかなり評価値が異なります。

局面図

60手目 △8六歩(封じ手) 

 図は一日目終了時の局面。この手は後手の△7五歩と2つ目の歩を当てた手に対して先手が▲5四歩と3つ目の歩を当てに行ったところ。ここで先手が次の60手目を封じた。この局面の評価値は後手+425後手有利となっている。数手前から形勢が傾き後手有利となっており、一日目終了時点で形勢に差があるのは珍しい。
 ここでの棋士の封じ手予想は(1)△5四同銀、(2)△5四同歩、(3)△3六歩、(4)△8六銀などであったがソフトの読み筋は△8六歩(85)▲同歩(87)△同飛(82)▲8七歩打。
封じ手もソフト推奨手の60手目△8六歩でありソフト評価値は後手+417後手有利で進みました。

62手目 △3六歩打

 図は封じ手の60手目△8六歩に対して61手目▲同歩と応じたところ。この手はほぼ必然であり、ソフトの評価値も後手+451後手有利のまま。後手の羽生九段は恐らくこの局面は一晩考えたと思われ満を持して62手目△3六歩打と歩を打った。この局面でのソフト推奨手は△同飛(82)▲8七歩打△7六飛(86)であり本譜はソフト的には疑問手。62手目のあとは評価値は先手+38形勢互角に戻った。

69手目 ▲3三銀

 図は互いに攻め合いを目指し、68手△7六歩と歩を取り込んだ局面。評価値は先手+34と形勢互角がしばらく続いている。
 ここでのソフト読み筋は▲2四歩(25)△7七歩成(76)▲同金(68)△2四歩(23)▲5一角打△4二桂打▲2三歩打△同玉(22)。
 それに対して本譜は69手目▲3三銀。この手は疑問手であったらしくソフト評価値は後手+1004となり先手優勢に傾いた。

85手目 ▲8七歩

 図は83手目▲8五同桂と△8五歩の歩を払った手に対して84手目△7四桂と飛車に紐をつけるため桂馬を打った局面。83手目の評価値は後手+1490と後手ほぼ勝勢になっていたが、この手が控室も驚きの疑問手。ソフト的にも疑問手でこの図の局面での評価値は先手273形勢互角になった。
 ここでのソフト読み筋は▲5一角打△4二銀打▲7四飛(75)△8五飛(86)▲8六歩打△5五飛(85)▲4四歩(45)△同金(53)。
 本譜はここで、85手目▲8七歩と受けにまわって飛車取りに歩を打った。この手もこれまたソフト的には良くなく、評価値は後手+1237となり、再び後手勝勢に傾いた。評価値的には最後のチャンスを逃した形になった。

86手目 △7六銀打

 図は85手目▲8七歩の局面。この局面ではソフト評価値は後手+1237ですでに後手勝勢。ここでのソフト推奨値は△7八銀打▲同飛(75)△9六飛(86)▲同玉(97)△7八銀成(89)▲5一角打△4二銀打▲9三桂成(85)△6八成銀(78)▲8五玉(96)。
 これに対して本譜は86手目△7六銀打と上から銀を打つ順を選んだ。この手でソフト評価値は後手+3775となり一気に後手必勝の状態となった。
 ソフト推奨手とは異なる手を指したのに関わらず、逆に評価値が大きく改善されるってのは珍しく、ボクもみたことなくさすが羽生さん凄いわって感じになります。ただし△7六銀打は人間的には見える手のようで控え室でも検討されていた模様です。
 結果的には85手目が敗着、86手目が絶妙手ってことで2手で一気に形勢が傾きこのまま後手が押し切り96手で投了となりました。

 最初の図は投了図でこの状態で先手は必至のようです。ちなみにソフト読み筋は以下。▲7八金(68)△同銀(89)▲5二飛成(82)△同玉(42)▲6三銀打△4二玉(52)▲5四桂打△3一玉(42)▲4二桂成(54)△同玉(31)。

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